ジャンボ宝くじの期待値

 この記事を書いている現在、サマージャンボ宝くじが発売中です。宝くじの最大の魅力は、やはり当たれば大金を獲得できるという「夢」ですね。日常生活の中でのちょっとした興奮や期待感、そして楽しみや希望を購入した人に与えてくれます。

 ところでジャンボ宝くじの期待値について、みなさんはよく理解しているのでしょうか。宝くじの購入は多くの人々にとって夢を買う行為ではあるのですが、その現実も知っていただくという主旨で、ジャンボ宝くじの期待値と還元率について解説してみましょう。

 まず、ジャンボ宝くじの基本的なしくみについてご説明します。ジャンボ宝くじは、日本で最も人気のある宝くじの一つであり、ご存じのとおり年に数回発売されます。購入者は一定の金額を支払い、抽選により当選番号が決定されます。1等から末等までさまざまな賞があり、最高賞金額は数億円にも達します。

 宝くじの期待値とは、購入した宝くじ1枚あたりの平均的な返戻金を意味します。期待値を計算するためには、各賞金額とその当選確率を考慮します。例えば、あるジャンボ宝くじの1等賞金が1億円で、その当選確率が1/10,000,000であれば、1等の期待値は10円(=1億円 × 1/10,000,000)となります。このようにして、すべての賞の期待値を合計し、その総額を購入価格で割ることで、宝くじ全体の期待値が得られます。

 次に、胴元の“寺銭”について。“寺銭”とは、宝くじの売上から胴元(主催者)が差し引く取り分を指します。日本のジャンボ宝くじの場合、この“寺銭”は約50%に設定されています。つまり、販売された宝くじの総売上のうち約半分が賞金として分配され、残りの半分が運営費や慈善活動などに使用されます。

 ちなみに胴元(主催者)とは、具体的には地方自治体・全国自治宝くじ事務協議会・日本宝くじ協会・みずほ銀行・宝くじ販売代理店が該当します。

 具体的な例で考えてみましょう。仮にジャンボ宝くじの1枚の価格が300円で、1,000万枚が売れたとします。総売上は30億円になります。このうち15億円が賞金として分配され、残りの15億円が胴元の取り分(いわゆる“寺銭”)となります。これに基づいて、宝くじ1枚あたりの期待値は賞金総額15億円を販売枚数1,000万枚で割り、150円となります。つまり、300円で購入した宝くじ1枚の期待値は150円であり、実質的には半額の損失を見込むことになります。

【年末ジャンボ宝くじ(第731回 全国自治宝くじ)の期待値計算】

発売総額1,500憶円(25ユニット・1ユニット2,000万枚)

等級当せん金本数当せん確率当せん金×確率
1等700,000,000円25本0.0000000535
1等の前後賞150,000,000円50本0.000000115
1等の組違い賞300,000円4,975本0.000009952.985
2等10,000,000円500本0.00000110
3等1,000,000円5,000本0.0000110
4等100,000円35,000本0.000077
5等10,000円500,000本0.00110
6等3,000円5,000,000本0.0130
7等300円50,000,000本0.130
   期待値149.985

 ジャンボ宝くじの期待値の低さをおわかりいただけたでしょうか?50%の期待値なんぞ、ビジネスや金融商品の投資においては完全に不適格です。女性1人の髪の毛の本数はおよそ10万本といわれています。200人の女性のうち1人だけの毛髪1本の根元に見えないように印を付けます。その200人の女性の中から印の付いた1本の毛髪にあたる確率がジャンボ宝くじの1等の確率に該当します。このように考えればものすごく低い確率に感じることでしょう。まさに“ギャンブル”ですね。

 しかし、宝くじを購入する人々は、この低い期待値にもかかわらず、夢を買うことや社会貢献に参加するという側面を重視している場合が多く、実際、「一度は当たるかもしれない」という夢を抱き、経済的には不合理ながらも積極的に参加しています。また、宝くじの収益の一部は、公共事業や福祉活動に使われています。そのため、宝くじを購入することで社会貢献ができると感じる人もいるでしょう。したがって、この「善意のギャンブル」という側面は購入する人々に追加的な満足感を提供します。

 最終的に、ジャンボ宝くじの期待値は経済的な視点から見るととても低いのですが、社会的な意義や夢を買うという側面を考慮すれば、その価値は単なる数字以上のものがあるともいえます。宝くじを楽しむ際には、その期待値を理解しつつ、自分の楽しみ方や価値観に合った参加方法を見つけることが重要ですね。

この記事を書いた人 住之江区北加賀屋 西原 憲一